この森林は、シカがたくさん生息している森林です。と聞くと、皆さんはどんな森林を想像するでしょうか。動物がたくさん生きられる森林だから、きっと豊かな森林だろうと思う人もいるかもしれません。しかし、ある一種の生物だけが沢山いる森林は、決して健全な森林とは言えないのです。
日本中でニホンジカが増加!?
近年、ニホンジカの個体数は大幅に増加しました。1989年度には本州以南で約26万頭だったのが、2014年度には約246万頭まで増加したと推定されています。25年でおよそ10倍も増加したことになります。2014年度をピークに減少に転じ、2019年度の推定個体数は189万頭となりましたが、それでも1989年度の7倍以上の個体数です。また、分布域に着目すると、1970年代の後半から2010年代の後半にかけての40年間で約2.7倍に拡大しました。
増加すると何が問題なの?
ニホンジカが過剰に増えた森林では、植物が食い荒らされ、下草がほとんどない状態になっていることあります。そのような森林では、草本は、芽を出しても種を作る前に食べられてしまうので、次の世代を作ることが困難になります。また、樹木の実生も食べられてしまうので、若い木が育つこともできなくなり、長期間そのような状態が続くと、森林は老木ばかりになり、やがてニホンジカが食べられない植物ばかりが生える森林になると考えられます。
実際に、これまで幸いあまり人の伐採を受けず、多くの希少な植物が生き残っていた森林でニホンジカが増加し、何種もの希少植物が地域的な絶滅を起こしうる壊滅的な状態になっています。
どうして増加したの?
ニホンジカの過剰な増加の要因は複数考えられています。オオカミの絶滅、戦後の大規模な造林に伴って餌となる下草や実生が増加したこと、そして地球温暖化によって冬の積雪量が減少し、越冬中の死亡率が低下したことなどが要因として考えられています。
[雪の上に残されたニホンジカの足跡]
見つけたら気候変動いきもの大調査(バイオーム)に投稿を!
ニホンジカを見かけたら、バイオームにぜひ投稿してください。みなさんからの投稿により、ニホンジカがどこまで分布を拡大しているのかを明らかにしたいと思います。
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