1.「新宿御苑 いきもの観察会」について
2022年1月末日まで実施している「気候変動いきもの大調査 冬編」の一環として、2021年12月18日(土)、に東京都の新宿御苑において、小学生を対象とした「新宿御苑 いきもの観察会」を開催しました。
この観察会は、気候変動によって分布域や生態などが変化していると考えられる身近な生き物を探しながら、身近に起きている気候変動の影響を知ることを目的に開催しました。
観察を始める前に、事前レクチャーとして、気候変動について、今起こっている事やこれから起こると予測されていることを参加した小学生とその保護者の方に紹介しました。
会議室での説明の様子
地球温暖化が生態系に与える影響や、前回調査の結果を紹介したスライド
このようなスライドを用いて、新宿御苑で冬に見られる生き物や前年度の「気候変動いきもの調査」の結果で分かった生き物の分布の変化などを紹介しました。
そして、いよいよ観察の時間。2チームに分かれて、それぞれ生き物の専門家が植物や水鳥などを紹介しながら、生き物を探しに行きました(発見した生き物は2.参照)。
新宿御苑内の植物、水鳥などを中心に、1時間ほど野外観察をしました。
野外観察の様子
観察の終了後、事後レクチャーとして、各チームがどんな生き物を見つけたのかを報告しあいました。
観察で使用したアプリ・バイオーム(https://biome.co.jp/app-biome/)は、どのような生き物を観察したのか、撮影した写真とともに記録が残りますので、アプリを見ながら観察の結果を共有しました。
最後に、気候変動が生き物たちの生態系や私たちの暮らしに与える影響と、地球温暖化対策のために私たちができる行動を紹介しました。
この観察会で紹介した、気候変動やその影響、私たちにできることなどは、「気候変動いきもの大調査」に参加して、コラムなどを読むことで詳しく知ることができます。
現在、「気候変動いきもの大調査 冬編」は2022年1月31日まで継続しています。公園など身近な自然に足を運び、生き物を探してみてください。きっと発見があると思います。
2.イベント中に観察した生き物たち
野外観察では、植物や野鳥を中心に、多くの生き物に出会うことができました。その一部をご紹介します。
イロハモミジとイチョウ
紅葉シーズン終盤で、イロハモミジやイチョウの葉が観察できました。
地球温暖化の影響で、こうした樹木の紅葉の時期はどんどん遅くなっています。
60年前と比べるとイロハモミジでは20日、イチョウでは15日も遅くなっています。
イロハモミジ(左)とイチョウ(右)(参加者撮影)
アオキとアセビ
アオキやアセビといった常緑樹は、いま全国で問題となっているシカの増加と関係があります。
アオキはシカによく食べられる植物で、シカが増えている地域では食べつくされています。一方で、シカは葉に毒を含むアセビを食べないので、シカが増えた地域ではアセビばかりが生えている光景がよく見られます。
地球温暖化による積雪量の減少がシカの増加の一因と考えられるため、このまま地球温暖化が進めばシカの分布域や個体数がさらに増加し、全国的に森の姿も大きく変わるかもしれません。
アオキ(左)とアセビ(右)(参加者撮影)
水鳥たち
池の周りではアオサギ、カルガモ、オシドリ、カイツブリなどの水鳥を観察しました。
冬になるとたくさんの水鳥が北から渡ってきます。地球温暖化はこうした渡り鳥の行動にも影響を与える可能性があるため、注目して観察する必要があります。
アオサギ(左)、カルガモ(右)(参加者撮影:鳥をスマホで撮影するのは難しいですが、皆さん頑張って撮影してくださいました!)
その他にも、たくさんの生き物に出会うことができました。
3.振り返り、アンケートについて
最後に、この観察会で、身近な生き物の観察を通じて気候変動について学んだ子どもたちとその保護者の方にアンケートを実施しました。
地球温暖化が進むと生態系にどういう影響があるか、今回学んだ内容に関する質問には、「生きものの住む場所が変わってしまう」や「農作物がならなくなる」という回答がありました。
一方で、地球や生き物のために、「寒いときは暖かい服を着て、エアコンを使いすぎない」、「マイバッグやマイボトルを使う」、「フリーマーケットに参加する」といった具体的な行動(ゼロカーボンアクション30)に取り組みたいと回答してくれました。
今回の観察会では、実際に身近な生き物を観察することで、子どもたちと保護者の方に気候変動が生き物に与えている影響をより身近に感じていただけたようです。また、今回のような観察した生き物のデータを継続して集めることで、気候変動に対して、生き物がどう変わっていくのかが分かります。
全体を通して、子どもたちが最初の座学から最後のアンケートの回答まで、楽しく参加している姿が印象的でした。また、保護者の皆さまもご自身のスマートフォンで調査にご参加していただき、一緒に楽しんでいる姿も見られました。
体験を通して、生き物の様子や気候変動の影響を学び、自分自身の行動を変えていく。このような機会が広がっていけば、私たちの目標であるカーボンニュートラルの実現に近づくのではないかと感じました。
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